182j 民族教育を支える二人の在日コリアンに褒章授与

年末の忘年会シーズンは、韓国では褒章授与式の時期でもあります。各部門で優れた業績をあげた人に韓国政府が褒章を授与する行事が集中するためです。[参考までに、韓国の会計(事業)年度は1月から12月です]

10月29日の在外コリアン功労者国民勲章の授与式に続き、12月5日には大阪総領事館で2019年の教育発展功労者賞の授与式を行いました。

大阪総領事館の管轄地域にことしは二人の受賞者がおり、いずれも民族教育に取り組んできた人です。一人は国民勲章冬栢賞の受賞者、京都国際学園のキム・アンイル副理事長で、もう一人は国務総理表彰の受賞者、東大阪市立布施中学校の夜間学級で教えるキム・ドクミ講師です。

キム理事長は、京都国際学園が野球名門校に成長する礎を築いた人です。京都で唯一の韓国系民族学校である京都国際学園の生徒数が100人を割って存亡の危機に瀕し、学校の再興に悩んでいたとき、野球部の創設を推進した人です。

きっかけは1999年6月の新聞記事でした(오사카통신182写真)。 「学校再興」に悩んだ和歌山県立日高高校中津川分校の野球部が分校としては初めて甲子園大会に出場した後、減少していた学生数が増えて活気を取り戻したという記事でした。偶然、記事を目にした瞬間「これだ」と思い、野球部の創設を思いつき推進したそうです。

このアイデアは見事に的中しました。同校の野球部が京都府内で甲子園出場を争うほどの名門野球部に成長してから学生数も増え、学校に対する評価も変わっていったのです。一時は中高合わせて100人以下まで下落した学生数が、今では150人を超えるまでになりました。キム副理事長は道路工事を主な業務とする建設会社を経営しており、運動場の整備をはじめ学校の教育環境改善にも多大の貢献をしています。

もう一人の受賞者、キム・ドクミ講師は1989年、30代の半ばに民族講師として出発し、今まで30年のあいだ大阪府内の在日コリアンが多い学校を回りながら、彼らが韓国人として自覚し誇りを持てるよう、民族教育に貢献して来ました。

民族教育との出会いは、初めて赴任した日本の公立小学校で差別される在日コリアン生徒のために民族学級を作ったときでした。彼らが日本人の生徒にいじめられ、しょげている生徒を目にしたのです。そこで、生徒たちを力づけるため、いつも彼らに笑いかけ、彼らがチャング(長鼓、韓国の伝統打楽器)の音を聞いて元気づけられるようにと、教室のドアをあけてチャングを一緒に叩こうと誘ったそうです。生徒たちの韓国語能力とチャングの演奏力を育むため、困難な生活のなか自費で韓国に渡って1年ほど学院に通ったといいます。

現在、在日コリアンが多く住む東大阪の布施中学校の夜間学級で社会科を教えています。最近、30年前に初めて民族学級で教えた生徒の子が同じ学校の民族学級に通っていると知り、いたく感動したそうです。

キム講師は6月末に開催されたムン・ジェイン大統領と在日コリアンの懇談会で、ハンカチで泪(なみだ)をぬぐう姿が写真に撮られ、有名になりました。懇談会の席上、ムン大統領が民族教育を評価する発言をした際、亡くなった母親が脳裏に浮かび、思わず泪がこぼれたそうです。

お二人の話を聞くにつけ、その業績に比べて褒章の重みがあまりに軽いように思います。在日コリアンの人口が年々減少し、民族教育が危機に瀕しているといわれるなか、今回の受賞者ほか多くの人々の献身的な努力に支えられ、民族教育は多くの困難を抱えながらも維持され発展しています。関係者の労苦にただただ感謝するばかりです。

Leave a comment

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.