211j 朝鮮陶磁の名品を所蔵する大阪市立東洋陶磁美術館

6月11日、関東地方と関西地方が本格的な梅雨(つゆ)に入りました。例年より少し早い梅雨入りだといいます。大阪も最高気温が約30度となり、雨が降ったりやんだりの一日でした。コロナ禍のなか蒸し暑い梅雨の天候を一ヵ月耐えなければならない、と思うと重い気分になります。

雨模様のなか、総領事館の職員とともに大阪市立東洋陶磁美術館を訪ねました。春の人事異動で職員が加わった機会に、所管区域内の朝鮮文化を自らの目で見て体感し、両国間の文化交流について理解を深めるために企画した見学会です。

東洋陶磁美術館は、韓国の国立中央博物館を除いて、高麗青磁や朝鮮白磁など朝鮮陶磁の逸品を最も多く所蔵する世界的にも著名な美術館です。朝鮮の陶磁器を中心に中国と日本の陶磁器の所蔵品も豊富です。

東洋陶磁美術館のコレクションには、大阪韓国総領事館の前身である在日代表部大阪事務所の初代所長、李秉昌(イビョンチャン 1915-2005)博士が寄贈された朝鮮陶磁器を中心とする李秉昌コレクションと中国陶磁器の分野で世界に知られた安宅(あたか)コレクション*があります。美術館には日本の国宝2点と重要文化財13点があります。*安宅英一 (Wikipedia)

李秉昌コレクションは高麗青磁ほかの朝鮮陶磁器301点と中国陶磁器50点からなり、1999年に開設されました。李博士が苦心の末、日韓友好と在日コリアンの自信と誇りを高めたいとの思いから東洋陶磁美術館に寄贈されたものです。韓国に寄贈されたのは国立中央博物館に1点だけといいます。

私たち一行は出川哲朗館長ほかの案内や説明を受け、李秉昌コレクションと開催中の特別展「天目–中国黒釉の美」(6/2-11/8)を見学しました。天目は中国の宋時代(960-1276)に黒釉をかけて焼成した茶碗です。今回の展示では油滴天目茶碗のなかで唯一国宝に指定されている美術館所蔵の茶碗(南宋)も公開されています。

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李秉昌コレクションは美術館3階に常設展示され、特別展の規模に応じて縮小展示されます。これまで訪問したときはいずれも縮小され、多くの作品を見ることができませんでした。今回は通常展示でしたので、コレクションを満喫できました。自ら巨額を投じて収集した愛蔵品を日韓友好と在日コリアンのプライドのため、惜しみなく寄贈されたのです。博士の遺志が十分に生きていることを感じます。

日本の大阪のまんなか、中之島にこうした朝鮮陶磁器の美を堪能できるすぐれた美術館があります。人気の Moto Coffee に行列をなすほど来訪する韓国の若者たちは、そこから徒歩5分の美術館にはやって来ない、と美術館の関係者が残念がっていました。美術館があることを知らないからで、知っていて来ないわけではないでしょう、と私は弁護したのですが。