164j 尹東柱のように自分の思いを発信したい

10月26日(土)午前、京都府宇治市で詩人尹東柱(1917-45)の<記憶と和解の碑>建設2周年記念式が催されました。詩碑は天ヶ瀬ダム下の吊り橋近く、宇治川と志津川が出会う10坪ほどの端地に建っています。

赴任した年に行われた第1回行事に続き、ことしも参加しました。日本人がイニシアティブをとった詩碑建設委員会の主催行事で、日本の市民と京都民団の関係者や在日コリアンが参加するささやかな集いですが、昨年と比べ、いくつかの変化に気づきました。

詩碑の建つ場所周辺が整備され、階段ができました。道路より1-2m低い所に建つ詩碑に行くのに、以前は階段もなく、道路から詩碑の場所まで砂利を敷いた傾斜地を滑って降りていたのです。周囲の景観もあまりよくありませんでした。

このような事情を知った京都民団が2周年行事の前日までに階段を造成し、詩碑の周りに小石をきれいに敷いて誰もが安全に訪ねられるように整備したのです。整備事業は、お金の問題よりも詩碑の建つ土地が村と市の所有にまたがっており、村と市の許諾を得るのが大変だったそうです。民団自ら積極的に当事者を訪ねて許可を得、2周年の前日までに整備工事を終え、階段横の斜面にはムクゲを一本植樹したとのことです。

もう一つの変化は、参加人数が昨年より増えたことです。昨年はせいぜい50人ほどでしたが、ことしは地域出身の議員2人を含み、70人を超える人々が参加しました。さらに意義深いのは、尹東柱が通った同志社大学の系列にある同志社中学校の生徒3人が参加し、尹東柱の詩を暗誦し追悼の辞を述べたことです。1人の生徒が「私には関係ない、私が何をしても変わらないとは考えずに、詩人尹東柱のように自分の思いを外に向かって発信できる人になりたい」と述べ、参加者の大きな拍手を浴びました。

行事は、開会宣言、黙祷、主催者挨拶、献花、参加者代表挨拶に続いて、尹詩人の詩三篇(서시[序詩]、공상[空想]、새로운 길[新しい道])をそれぞれ韓国語と日本語で暗誦し、最後に詩人が好んで歌ったアリランを斉唱して終わりました。

ことしの行事が昨年より著しく進展したようすを見て、宇治にある尹東柱詩碑が新たな文化の象徴になるだろうという予感を感じました。

尹東柱の詩碑は JR または京阪電鉄の宇治駅で下車、天ヶ瀬ダム方向に歩いて40分余りのところにあります。標識もなく不便ですが、グーグルマップに<詩人尹東柱 記憶と和解の碑>と入力すれば位置が表示されます。

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