074j 自然科学分野でノーベル賞受賞者を輩出し続ける日本

ノーベル賞の発表時期が始まり、1日の夕方、最初に発表されたノーベル医学生理学賞の共同受賞者に日本の学者が含まれていました。細胞の免疫システムを利用して、がんの治療方法を開発した本庶佑(ほんじょたすく)京都大学特別教授がその人です。

日本人としてノーベル賞を受賞するのは、24番目(物理9、化学7、医学生理学5、文学2、平和1)ですから、さほど驚くことでもないようですが、日本全体が歓迎ムードに揺れています。ノーベル賞の権威がそれだけ大きいということでしょう。

とりわけ、関西での展開には熱いものがあります。受賞者が京都大学の教授であり、本庶教授の研究成果を治療薬(オプジーボ、Opdivo)として生産している製薬会社が、大阪に本社を置く小野薬品ということを知れば、この地域の人々が興奮するのも理解できます。

免疫システムに基づくがんの治療方法の開発は、感染症に対するペニシリン発見に匹敵するという専門家たちの評価が出ているのを見ると、本当に偉大な業績のようです。従来、がんは手術、放射線、抗がん剤の3つの方法で治療してきましたが、免疫治療という新しい治療法が加えられただけでなく、がん征服の可能性まで開いたということです。

このような優れた成果も成果ですが、私の関心は、ノーベル賞のなかでも自然科学分野で受賞者を輩出し続ける日本の底力にあります。本庶教授は受賞者として発表された直後の記者会見で次のように述べました。

「賞というものは賞を授与する団体が独自の基準で定めるものである。この賞を受けようとして長く待っていたとか、そういう考えはない」 「(モットーは)好奇心、そして物事を簡単に信じない。確信するまでやる、頭で考えて納得するまでやる」「重要なのは知りたいと思うことだ。不思議だと思うことを重視する、教科書に出ていることをそのまま信じないで、疑ってみる。最後まであきらめない」

本庶教授のこれらの言葉に「日本の底力」の答えがあるように思います。さらに付け加えるとすれば、こういう探究心が発揮されることを可能にする、長い年月を待ち支援してくれるシステムの存在です。

韓国はこういう基本的な基盤の違いは見ずに、経済の「圧縮成長」のようにいくつか重要な分野と場所を選定して資金を集中的に投資すれば、すぐノーベル賞を獲得できると考えているように見えます。韓国人が日本の大学を訪ね、「日本は韓国より英語の実力も低いのに、どうやってノーベル賞をたくさん取れるのか」と話したこともあるそうで、かなり失礼な話です。

他方、大阪に赴任以来、周辺の大学を訪問し、学長に会っていますが、多くの方が「何年か経つと、日本からノーベル賞受賞者が出るのは難しくなるだろう」と愚痴をこぼします。最近、日本の大学でも効率と成果を重視する風潮が支配的になり、時間を要するのに成果が不確実な基礎分野を軽視し始めたからだそうです。韓国のアカデミズムはどうなのか、言わずもがなですが。

One thought on “074j 自然科学分野でノーベル賞受賞者を輩出し続ける日本”

  1. 本庶教授のモットーを英語の単語六つ(6C)で表現している記事がありました。Six Cs are:
    Curiosity, Courage, Challenge, Confidence, Concentration, and Continuity. (順不同)
    何回か読み返すと、すべてのことに通じるように思われます。

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