Tsai Ingwen’s autobiography

蔡英文(Cài Yīngwén 1956-)の自伝を読んだ。原著「洋蔥炒蛋到小英便當―蔡英文的人生滋味」は、2012年総統選の前年2011年に出版され、日本語訳は白水社が2017年2月に出版している。

彼女の処女作『蔡英文:新時代の台湾へ』を同じく白水社が2016年5月に出版している(原著「英派: 點亮台灣的這一哩路」)。以前から彼女に注目していたが、今回ようやく自伝を読んだ。きっかけは、最近にわかに露骨になってきた中国大陸の台湾に対する外交攻勢である。

2016年総統選のさなかに書かれたTime の記事が蔡英文と台湾の置かれた立場を良くまとめている。‘Reunification Is a Decision to Be Made By the People Here:’ Breakfast With Taiwan’s Tsai Ing-Wen  Emily Rauhala / Taipei Jun 18, 2015

第5章「民進党を再び立て直す」の民進党の党主席選挙への立候補を決意するに至る記述のなかに彼女の人となりと思考方法がにじみ出ているように思う。日本に彼女のような政治家がいたら、と思う。と同時に、蔡英文を育てた台湾社会と台湾人の底力を思う、すごい人たちだ。

少し長いが、以下に該当部分を引用する。

…私が2004年に民進党に入ったのは、民進党の価値観に共鳴したからだ。だから、ここで重要なことは、私がこの党を愛しているか、責任感があるか、自分を台湾に捧げることができるかどうか、などといったことではなかった。それは疑う余地もなかった。

私の考えは一つの問題に集中していた。移行期の台湾は、中国大陸の脅威とグローバリゼーションの挑戦に正面から立ち向かわなくてはならない。その中で、民進党はどのような役割を果たすことができるのか

アジアの急速に変わりゆく政局の中で、この政党は台湾をどのように支えることができるのか。さらに重要なのは、人々からの信任が危機的状況にあるこの政党が、人民が期待する方向へ台湾を導くことができるのか。…再三考えた末に、私は長年待ち望んでいたのんびりとした生活に思いを馳せた。そして、断ることにした。

しかし、ある日、食事をすませてソファでリラックスしながら韓国ドラマを見ていたところに、アシスタントが電話をかけてきて、私にすぐオフィスに来るように言った。李遠哲(Lĭ Yuănzhé 1936-)が会いに来るというのだ。

韓国ドラマを見ている途中で外出などしたくなかった。しかし、李遠哲は私が尊敬する先輩だ。彼が何の用事もなくオフィスに来るわけがない。仕方なくオフィスに戻った。オフィスに着いてしばらくすると、李遠哲がやって来た。なんと彼は私に民進党の党主席の選挙に出るように勧めに来たのだった。

彼は情勢の分析から私の疑問に対する回答まで、腰掛けてから二時間話を続けた。私は最後には降参するしかなかった。

…このことを考えながら、また何日かが経過した。もともと賭けごとをまったくやらない私からすると、これはある意味、大きな賭けだった。

最後に私は自分に言い聞かせた。「台湾には強くて、力のある野党が必要なのだ。私が決心すれば、この件を成し遂げる能力と意志力も必ずついてくるはずだ

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